空腹時血糖値について

空腹時血糖値が高くなると糖尿病の発症リスクが上がると言われています。空腹時血糖値について詳しくみていきましょう。

目次

空腹時血糖値の基準値

特定健診で測定する空腹時血糖値とは、「前日の夕食以降は水以外、口にしないでください」と言われ、10~14時間の絶食後、翌日の早朝に採血して測定する血糖値です。早朝空腹時血糖値とも呼ばれます。

空腹時血糖値の基準値を以下に示します。

  • 正常域:110mg/dl未満
  • 正常高値:100~109mg/dl
  • 境界域:110~126 mg/dl未満
  • 糖尿病域:空腹時血糖値126mg/dl以上

特定健診で特定保健指導の基準値となるのは、正常高値も含む空腹時血糖値100mg/dl以上とされています。空腹時血糖値が100mg/dl以上になると、糖尿病の発症リスクが2倍以上となると言われており、将来的に、糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいメタボリックシンドローム予備軍の方たちが含まれます。(出典:厚生労働省生活習慣予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット高血糖

空腹時血糖値だけで糖尿病と診断されるわけではありませんが、正常高値のうちから個人の状態に合わせて肥満の改善や栄養指導など、適切な保健指導を受け、早期の糖尿病の発見・治療につなげることが望ましいとされています。

空腹時血糖値が高い原因

体は血糖値を一定に保つ働きを持っており、食事で摂った炭水化物などの糖質がブドウ糖となって血液内に入ることで血糖値は一時的に上昇しますが、血糖値を下げる働きを持つインスリンが膵臓のβ細胞から分泌されて、次の食事を摂る前までには血糖値は元の値に調整されます。しかし、何らかの原因で「インスリンの分泌量が少なくなってしまった場合」や、「インスリンが分泌されているのに血糖値を下げる作用が効かない場合」に、血糖値は下がることなく高いままとなり、空腹時血糖値が高くなります。

空腹時血糖値が高い状態が続くと、高くなっている血糖値を下げようとインスリンがたくさん分泌されますが、インスリンの作用が追い付かない、インスリンの作用が段々効きにくくなってくる(インスリン抵抗性)などの状態が慢性的に起こってきます。そうなると、常に血糖値が高い状態が続くこととなり、体に様々な影響を与えて糖尿病の発症へとつながるのです。

空腹時血糖値を高くしてしまう原因として以下が考えられます。

  • 血糖値が高くなりやすい体質の遺伝
  • 肥満
  • 食べ過ぎ、飲み過ぎ
  • 過度のストレス
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 肝臓の疾患に伴うもの
  • 膵臓の疾患に伴うもの
  • 内分泌疾患に伴うもの

それでは詳しくみていきましょう。

血糖値が高くなりやすい体質の遺伝

血糖値が高くなりやすい体質の遺伝が言われており、家族に糖尿病の方がいる場合は、血糖値が高くなりやすい体質である可能性が高いので注意が必要です。

肥満

肥満は中性脂肪がたくさん体に蓄えられた状態です。中性脂肪を蓄える脂肪細胞はインスリンの作用を阻害するアディポサイトカインという物質の産生と分泌に関わっており、インスリンの効きを悪くするインスリン抵抗性を生じさせると言われています。インスリン抵抗性が生じると、膵臓のβ細胞はさらに多くのインスリンを分泌し続けますが、やがてはβ細胞が疲れ果ててしまい、インスリンを分泌できにくい状態となってしまいます。インスリンの分泌量が不足するので血糖値は高くなります。肥満であると運動不足も引き起こし、食事で摂ったカロリーを消費する機会が持てないのでさらに肥満を助長する結果となります。肥満は動脈硬化などの原因ともなり、糖尿病などの生活習慣病の発症を助長させます。

食べ過ぎ、飲み過ぎ

血糖値は摂取したものの糖質の量に影響されます。たくさん糖質を摂るとインスリンの分泌が間に合わず、血糖値は高くなります。また、カロリーや脂質をたくさん摂って体内の中性脂肪が増えると、インスリン抵抗性を生じ、インスリンの効きを悪くして血糖値が高くなります。糖質をたくさん含む炭水化物や脂質の多い肉類や油もの、甘いお菓子やジュースなどの摂り過ぎや食べ過ぎ・飲み過ぎによるカロリーオーバーは血糖値を高くする原因となります。

過度のストレス

ストレスを感じると、交感神経が刺激され、血糖値を高くするホルモンが分泌されます。ストレスを感じるということは体や心が危機的状況にさらされており、脳の働きを活発にし、神経を集中させ、全身の筋肉がいつでも働くことができるように血糖値を高くして脳や筋肉のエネルギー源となるブドウ糖をたくさん準備しようと体が反応します。血糖値が高くなるのはストレスがかかっている時だけなのですが、ハードワークや人間関係などで、常時ストレスを感じている状態では血糖値が高くなります。ストレスを感じると、暴飲暴食にも走りがちとなり、カロリーを摂り過ぎて血糖値が高くなることにもつながります。

喫煙

喫煙は、交感神経を刺激して血糖値を高くし、インスリンの働きを低下させます。喫煙者は非喫煙者の1.4倍糖尿病となりやすいという報告もあります。(出典:厚生労働省生活習慣予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット喫煙と糖尿病

飲酒

アルコール自体は血糖値を高くしませんが、ビールや日本酒に含まれる糖質や、高カロリー、高脂肪のおつまみが血糖値を高くします。また、アルコールは肝臓内に蓄えられているグリコーゲンをブドウ糖へ分解することを亢進するので、飲酒後、一時的に血糖値は高くなります。過度の飲酒は肝臓の機能を悪くします。体内の余ったブドウ糖を、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵する肝臓の働きが低下すると、血液内にブドウ糖が溢れかえり、血糖値が高くなります。適度な飲酒は血糖値を下げることも言われていますが、適度に抑えられないのがアルコールの性ですので、血糖値が高いと言われた方は控えることが望ましいでしょう。

肝臓の疾患に伴うもの

肝臓は血液中に余っているブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵し、血液中にブドウ糖が不足するとグリコーゲンを分解してブドウ糖して血液内に放出する働きを行っており、この肝臓の働きは糖代謝と言われ、空腹時血糖値に大きく関与しています。肝臓の疾患により、肝臓の機能が低下して糖代謝が上手く行われなくなると血糖値の調整がこんとろーるできなくなり、血糖値が高くなります。

膵臓の疾患に伴うもの

インスリンが分泌される膵臓自体が疾患によって機能が低下し、インスリンの分泌が障害されると血糖値が高くなります。

内分泌疾患に伴うもの

脳の下垂体の副腎皮質から血糖を上昇させる作用を持つコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されるクッシング病や、成長ホルモンの過剰分泌によって起こる先端巨大症、甲状腺ホルモンが過剰分泌される甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患でも血糖値が高くなります。

空腹時血糖値を下げるには?

空腹時血糖値が高くなるのは、「食事で摂取する糖質やカロリーが多すぎるためにブドウ糖が血液内にたくさん溢れている状態」、「血液中のブドウ糖をエネルギーとして使いきれずにたくさん余っている状態」です。

空腹時血糖値を下げるには、食事と運動の二つが基本となります。

  • 摂取する糖質を抑える=食事の調整
  • 消費するエネルギーを多くする=運動を行う

食事で血糖値を下げる方法

食事で血糖値を下げる方法として以下のような事が考えられます。

  • 自分の体格に見合った適切な1日の摂取カロリーを守る
  • 栄養バランスを考えたメニューにする
  • 外食時に工夫する
  • 間食は控える
  • 食事の時間を守って食べる
  • 良く噛んで食べる、食べる順番を変える

自分の体格に見合った適切な1日の摂取カロリーを守る

  • 標準体重=身長(m)×身長(m)×22
  • 1日の適性摂取カロリー=標準体重×作業強度

(作業強度:肥満・高齢・主婦・デスクワークの方は25kcal、立ち仕事・若年者は35kcalで計算)

栄養バランスを考えたメニューにする

炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン・ミネラル、食物繊維の栄養がバランスよく組み合わさったメニューにします。それぞれの栄養素のバランスの理想は、以下の通りです。

  • 炭水化物=1日の摂取エネルギー量の50~60%
  • タンパク質=1日の摂取エネルギー量の15~20%(体重(kg)×1.0~1.2ℊ)
  • 脂質=1日の摂取エネルギー量-(炭水化物+タンパク質)のエネルギー量

血糖値が高い人に共通してミネラル不足がみられることが言われており、人間の体の組織や細胞を構成しているミネラルは積極的に摂りたい栄養素です。ビタミンは糖の代謝に作用しており、食物繊維はブドウ糖の血液内への取り込みの速度を抑え、血糖値の上昇スピードを緩やかにします。腸内で水分を吸収しやすくし、便を軟らかくして便秘を予防する効果もあります。ミネラル・ビタミン、食物繊維は野菜や海藻、キノコ類、五穀類に豊富に含まれています。

主食(米などの炭水化物)、主菜(肉・魚などのタンパク質)、副菜・汁物(野菜・海藻・キノコ類などのビタミン・ミネラル、食物繊維)の一汁二菜で一食のメニューを構成するとバランスよく栄養素を取り入れやすくなります。白米を玄米、胚芽米などの五穀にするとさらにビタミン・ミネラル、食物繊維が効率よく摂取できることに加え、白米よりも噛みごたえがあるので、同じ量でも満腹感が得られやすくなります。主食に関していえば、お茶碗を一回り小さいものに変えることも、同じ量のご飯をよそっても多く見えるので少ない量でも満足感が得られやすいという効果があります。

外食時に工夫する

どうしてもカロリーが高くなり、栄養バランスが偏りがちとなる外食は極力控えたいですが、仕事の付き合いや息抜きとして、たまには外食を楽しむこともあると思います。最近では、糖質とカロリーを抑えた糖質制限食を提供するレストランも見られるようになりました。外食時に気を付けたいポイントをみていきましょう。

  • 小鉢の品数の多い和食の定食を選ぶ
  • 揚げ物の入ったメニューはカロリーオーバーとなりやすいので避ける
  • 丼物やラーメンなどは炭水化物を摂り過ぎてしまうので避ける
  • 外食で摂ったカロリーや偏ってしまった栄養は、その日の残りの食事で調整する

間食は控える

甘いお菓子やジュースに限らず、間食をすると摂った糖質分だけ血糖値が高くなるので、次の食事までに血糖値が下がりきらないまま、食事を摂ることでさらに血糖値が高くなってしまいます。間食をすることで1日の摂取エネルギー量もオーバーしやすくなるので、間食は極力控えましょう。

食間の空腹が辛い時は、ホットミルクや甘い香りのするハーブティーなど、ノンカロリーの温かい飲み物を口にすると満足感が得られ、精神的にもリラックスできます。一日の食事を4~5回に分けて摂ることや、朝食のメニューの中のヨーグルトなどの乳製品や果物を3時のおやつに持ってくるなどの方法もありますが、1日の摂取カロリーを超えないようにすること、栄養バランスを崩さないようにすること、規則正しい時間に食べることを守って摂るようにしましょう。

食事の時間を守って食べる

生活リズムを整え、決まった時間に食べることも大切です。食事の時間が不規則になると血糖値の上がり下がりも不安定となります。夜遅くに食べると、脂肪を蓄える働きによって肥満となりやすくなるので夜10時以降の食事は控えるようにしましょう。

良く噛んで食べる、食べる順番を変える

食事を摂る時は良く噛んでゆっくり食べると消化吸収のスピードも抑えられます。良く噛むことで満腹感も得られ、食事量を抑えて肥満の予防にもつながります。野菜、キノコ、海藻類から先に食べ、肉や魚などのタンパク質、最後に米などの炭水化物を摂ることで、糖質の吸収が緩やかになり、血糖値が急激に高くなることを抑えることができます。

運動で血糖値を下げる方法

次に運動で血糖値を下げる方法をみていきましょう。

運動をして血糖を筋肉でエネルギーとして消費することで血糖値を下げることができます。血糖値を高くする原因となる肥満も運動によって予防することができます。

運動で血糖値を下げる方法として、以下のようなポイントがあります。

  • 食後30分から2時間の間に運動を行う
  • 20分以上の有酸素運動
  • ストレッチと筋力トレーニング
  • 生活の中にも運動を

ひとつずつ見ていきましょう。

食後30分から2時間の間に運動を行う

食後に運動をすると血糖値が高くなることを抑えられます。

20分以上の有酸素運動

ウォーキングや軽いジョギング、水中ウォーキング、ラジオ体操、サイクリングなどの全身を使い、呼吸で酸素を摂り込みながら行う運動を有酸素運動といいます。食事で摂ったブドウ糖をエネルギーとして筋肉で消費し、肥満解消のために脂肪を燃焼するには、酸素を十分に吸いながら全身を動かす有酸素運動が効率的です。毎日運動を継続するためにも、短距離走などの激しい運動よりも軽く息が弾む程度の運動がおすすめです。ウォーキングは20分以上続けて行うことで脂肪燃焼の効果が期待できます。

ストレッチと筋力トレーニング

運動を行ってエネルギーを消費するには、筋肉を効率よく働かすためにストレッチや筋力トレーニングを行って、筋肉を柔軟に保ち、筋力・筋肉量を維持することも大切です。下肢や体幹の筋力が低下すれば運動を行ってもすぐに疲れたり、痛みがでたりして運動を継続することもできません。重いダンベルなどの筋力トレーニングを急に行うと筋肉を傷める原因ともなりますので、まずは足を上げる運動やスクワットなどから始め、徐々に負荷をかけていくようにしましょう。ストレッチや筋力トレーニングは息を止めて行うと筋肉が緊張して効率よく働かず、血圧が上がる危険性もあるので、息を吐きながら行うようにしましょう。

生活の中にも運動を

仕事や家事で忙しいとなかなか運動する時間を摂れないという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、日常生活の中にできるだけ運動の機会を設けるようにしましょう。

  • 買い物や通勤時に20分以上歩くようにする
  • できるだけ階段を使うようにする
  • 四つ這い姿勢で雑巾がけを行う
  • テレビを見ながら足を上げる、スクワットをするなど「ながら運動」を行う

  

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